音楽なら入れ食いですが何か?

野良ネコ音吉のジャンル破壊音楽ブログ

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ミューズに見初められたフランコ・ファジョーリ

イタリア・オペラを観ると、「こりゃ日本でいえば歌舞伎か新国劇ってところだな」 と音吉は思うんです。オペラの化粧も、時代を遡るほど歌舞伎の隈取りにも似た独特のものになりますし、熱狂的に「ブラボー(ブラバー、ブラビー)」と声のかかる様は、「成駒…

近代オペラの基となったカストラート

映画『カストラート(Farinelli Il Castrato)』はご覧になりましたか? ベルギーの監督ジェラール・コルビオ(Gérard Corbiau, 1941 - )が1994年に製作した映画で、18世紀のカストラート、ファリネッリ(Farinelli[本名]カルロ・ブロスキ(Carlo Broschi…

ナゲシュワラ・ラオとヴィーナ

1960年代の後半から1970年代の前半にかけて、インドは一部の若者にとっては憧れの国でした。 これは当時、ベトナム戦争や公民権運動などで露呈した社会的・国家的な矛盾に対するカウンターカルチャーとして脚光を浴びたヒッピー(Hippie, Hippy)・ムーブメ…

ミュージシャンに大人気のミュージシャン ゲイリー・ハズバンド

2018年8月1日は、音吉と妻さんにとって忘れられない日となりました。名古屋のジャズ・クラブ「STAR EYES」で、ゲイリー・ハズバンド(Gary Husband, 1960 - )のソロ・ライブを観る機会に恵まれたからです。 当日の夕方は曇っていて風も吹かず、むっとする…

バンド『プラスチックス』の軌跡

ふと思い出して、高校時代に買ってホコリを被っていた楽器を引っ張り出していじってみた。SNSでそれを呟いたら、「あー、自分もやったことあるわ」 という友達のコメがちらほらと。気まぐれに、「一緒に楽器で遊んでみね?」 と声をかけたら、たちまちギター…

大震災の被災地を慰問した合唱団『アヌーナ』

東日本大震災が発生した2011年12月、放射能汚染を恐れて海外のアーティストが次々に来日を取りやめる中、アイルランドからコーラス・グループが日本を訪れ、被害の爪痕も生々しい被災地の慰問を行いました。被曝の危険性を日本人以上に強く感じていた海外の…

17世紀のイギリスをを生き抜いた作曲家マシュー・ロック

イギリスにとって17世紀は、清教徒革命と王政復古という国家の屋台骨を揺るがす事態が続いた激動の時代でした。 この凄惨な時代を生きた人々の中に、マシュー・ロック(Matthew Locke, 1621頃 - 1677)という名の作曲家がいました。 音吉がマシューの音楽に…

ハービー・ハンコックで聴くクロスオーバー、フュージョン、そして今

音吉が10代の頃(1970年代)は、洋楽ポップスの世界、特にジャズの世界が大きく変わろうとしていた時代でした。今回は、この変化をジャズ・ピアニストで作曲家、そしてプロデューサーでもあるハービー・ハンコック(Herbie Hancock, 1940 - )の音楽を通じて…

イスラエルとアラビア語圏で愛された歌姫オフラ・ハザ

イスラエルで生まれ、イスラエルで生涯を終えながらも、自身のルーツに根ざしたイエメンの歌を歌い、「イスラエルのマドンナ」と称えられた歌手がいます。 オフラ・ハザ(Ofra Haza, 1957 - 2000)は、テルアビブで暮らすイエメン難民の貧しい家庭で生を受け…

チェット・ベイカー 人生の痛みに寄り添う音楽

2015年に公開された映画『ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE』をご覧になった方はいますか? ウェストコースト・ジャズを代表するトランペッターでヴォーカリストのチェット・ベイカー(Chet Baker, 本名:Chesney Henry Baker Jr., 1929 - 1988)の生涯…

フライング・リザーズと『Money』

以前にジャケ買いの話を書いたことがあるんですが、今回はそれでいちばん当たった(と音吉が思っている)アーティストを紹介したいと思います。 ご存知ない方のためにカンタンに説明しますと、ジャケ買いとは、ダウンロード販売もないレコードの時代に、曲も…

ニコライ・カプースチンはジャズ? クラシック?

少年の頃から物事を整理するのが苦手だった音吉にとって「分類」とか「仕分け」と呼ばれる作業は苦行以外の何ものでもありません。グラデーションがあるとはいえ所詮はひとつの塊であるものを切り分けるわけですから、これはある意味、暴挙なんだと思うんで…

アンリ・デスと『テトペッテンソン』

大人になっても絵本や児童文学が好きな人は多いですね。大きな本屋さんでは児童書のコーナーが充実していて、親御さんと小さなお子さんが思い思いに試し読みができるように土足禁止のスペースが設けられているところがあります。面白いのは、そんなスペース…

安西腰鼓(安塞老腰太鼓)

いつのことだったか、どんな番組だったかもロクに覚えていないのですが、NHKのドキュメンタリーか歴史番組だったと思います。オープニング・シーンに総毛立ったんです。中国内陸部の礫漠と思しき荒れ地に、腰に結わえ付けた太鼓を両手に持ったバチで叩きなら…

神々を召喚するガムラン

世界には無数の民族音楽があります。もっとも民族音楽というコンセプトは、何かスタンダードなものを想定して、それから外れたものが民族音楽と括られているわけで、音吉的には「なんだかなぁ」なんですが。これは大きなテーマなので、改めて別の機会に考え…

琴と筝 雅楽の楽しみ

和琴(わごん)という楽器をご存知でしょうか? 雅楽の、それも国風歌舞(くにぶりのうたまい)という歌舞で使われ、「むつのを(六つの緒)」という俗称でも呼ばれています。見た目は筝(いわゆるお箏[こと])と似たような格好をしていますが、琴と筝は起…

ヴラド・ペルルミュテールとラヴェル

人は思わぬところでトンでもない人物に出会っているものです。 何年であったのかがどうしても思い出せないのですが、おそらくは1970年前後であったと思います。 木枯らしの吹きすさぶ冬の夜で、コンサートとなれば嬉々として出向く音吉が気後れしてグズると…

アンドレ・マルシャルと『パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582』

以前に、演奏者と作曲家の文化的な違いが音楽に反映することがあるという投稿をしたことがありますが、今回もそんな類のお話です。 アンドレ・マルシャル(André Louis Marchal, 1894 – 1980)というフランスのオルガニストをご存知でしょうか。 ドイツのヘ…

作曲家による自作自演の録音とロウ管蓄音機

自作自演というと、なんだか嘘つきのアリバイみたいですが、今回は作曲家が自分の作品を演奏するという本来のお話です。それも19世紀末から20世紀初頭にかけての作曲家が遺した自作自演の録音なんです。 管の表面にロウを塗ったロウ管(wax cylinder)を機械…

ブクステフーデ『シャコンヌ ホ短調 BUXWV 160』

音楽の好みは人それぞれ。親子といえども好きな作曲家や演奏者が一致するのは稀なことです。 音吉の家族もそうで、バロック音楽に限っていえば、父はJ.S.バッハ、母はパーセル、そして音吉はラモーと、てんでバラバラでした。 それでも例外はあるもので、唯…