音楽なら入れ食いですが何か?

野良ネコ音吉のジャンル破壊音楽ブログ

ジャクソン5と『ABC』

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 大阪万博が開幕して世が万博一辺倒になった1970年の春休みのことでした。
 当時小学6年生になったばかりの音吉は、街のレコード店で流れていた音楽に即、感電してしまいました。ビートの効いた子供にも親しみやすいバブルガム・サウンドを、おそらくは自分と変わらない年の子がカッコよく英語で歌ってるんです。店員さんに誰の歌か訊いたところ、
「ジャクソン5(Jackson 5)。キミ、買わなかったっけ? 去年、『帰ってほしいの(”I Want You Back”)』ってシングル盤」
 買っていませんでした。今みたいに「ググって検索♪」なんてわけにはいかない御時世でしたから。それでも聴いたメロディ・ラインが頭の中でグルグルと巡って忘れられず、後日、当時ポップスの師匠と仰いだ高校生のお兄さんを訪ねました。
「何だよ、ジャクソン5を知らないなんて遅れてるなぁ!」
 覚えていますか? この「遅れてる」って表現。高度経済成長期の社会の変化は目まぐるしく、流行に敏感な若者だけではなく、大人までもが古きを侮り新しきを妄信する風潮がありました。
 時代の流れから取り残された弟子を憐れんでくれたお兄さんは、たっぷりとジャクソン5の情報を恵んでくれました。
 ジャクソン5とは、アフリカ系アメリカ人(なんて当時は言いませんでしたが)の5人兄弟で構成されたユニットで、全員がティーンだということ。1969年に『帰って欲しいの』でデビューし、音吉がレコード店で聴いたのは2枚目のシングル盤『ABC』であろうということ等々。そして最後に自分のコレクションからレコードを恭しく取り出し、『ABC』を聴かせてくれました。

 イントロもなく突然、歌は始まります。

You went to school to learn girl
Things you never, never knew before
Like "I" before "E" except after "C"

あの印象的なフレーズは、こんな歌詞でした。

A B C
It's easy as, 1 2 3
As simple as, do re mi
A B C, 1 2 3
Baby, you and me girl

 お師匠の説明では、
「リード・ボーカルのマイケルはお前と同い年だぞ」
 ということで、つい最近までそう思い込んでいたんですが、実際は音吉より1才年上でした。
 ジャケ写には、高校生か大学生ぐらいの三人と、本当に自分と変わらない年の二人の少年がモノクロで写っていたのを覚えています。
 その頃、音吉はレッド・ツェッペリンになけなしの小遣いを注ぎ込んでいたので、ジャクソン5のレコードを買う余裕はありませんでしたが、当時モータウンサウンドに首ったけだったお師匠が遊びにいくたびに聴かせてくれたので不自由はありませんでした。
 彼らの動画を初めて目にしたのは高校生になりたての1975年のこと。テレビでジャクソン5モータウンからエピック/CBSに移籍したというニュースで『Get It Together』歌う姿が放送されていました。同世代なのに、なんであんなにカッコいいんだろうと軽く嫉妬しちゃいましたね。
 CBSへの移籍には、この時代ならではの事情があったようです。以前に1910フルーツガムカンパニーで取り上げたバブルガム・サウンド(低年齢向けのポップス)のことを覚えていますか? ジャクソン5もバブルガム路線で売れたわけですが、70年代になって始まったディスコ・サウンドの波に乗ろうとしていた彼らの意向をモータウン側が許さず、自由に活動させてくれることを確約したCBSに移籍したようです。
 この時にソロ活動を始めていた三男のジャーメイン(Jermaine Jackson, 1954 - )が脱退し、それまでコンガなどでゲスト出演していた七男のランディ(Randy Jackson, 1961 - )が正式なメンバーとなって誕生したのがジャクソンズ(The Jacksons)。ジャクソンズへの改名をもってジャクソン5は終わりを告げたのでした。
 『ABC』は、発売直後に音楽業界誌「ビルボードR&Bチャートとビルボード・トップ100の両方で一位となるミリオンセラーとなり、オハイオ州クリーブランドの博物館「ロック(ンロール)の殿堂(The Rock and Roll Hall of Fame [RRHOF])」に文字通りの殿堂入りを果たしました。[注: 以前、日本ではハリウッドにあるギター・センター「ロック・ウォーク(Rock Walk)」のことを「ロックの殿堂」と呼んでいた時期があったようです]
 マイケル以外の兄弟達は、生後間もなく亡くなった五男のブランドン(Brandon Jackson, 1957)を除いて現在もご健在です。
 マイケルについては、また別の機会に触れたいと思います。

 

『ジャクソン5』メンバー・プロフィール(ジャクソン姓省略)

  • ジャッキー(Jackie[本名: Sigmund Esso Jackson], 1951 - ) 長男。スポーツ万能
  • ティト(Tito[本名: Toriano Adaryll Jackson], 1953 - ) 次男。温厚で小太り。東日本大震災被害者への慈善活動を精力的に行った。
  • ジャーメイン(Jermaine Jackson, 1954 - ) 三男。ジャクソン5脱退後はソロ活動で活躍。
  • マーロン(Marlon Jackson, 1957 - ) 四男。ジャクソンズ解散後に実業界入りし、現在はケーブルネットワークのオーナー。
  • マイケル(Michael Joseph Jackson, 1958 -2009) 六男。言わずと知れた大スター。