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野良ネコ音吉のジャンル破壊音楽ブログ

ウィルソン・ピケットの『ダンス天国』

 1910フルーツガムカンパニーの『サイモン・セッズ』を聴きながら友だちと踊った音吉少年でしたが、もう一枚、自然に体が動き出すサウンドがありました。ソウル(Soul music, 広義にはR&BRnBとも表記。リズム&ブルースのこと])シンガーのレジェンド、ウィルソン・ピケットWilson Pickett, 1946 - 2006)の『ダンス天国(Land of a Thousand Dances)』です。

 音吉が持っていたシングル盤は6歳年上の従兄がプレゼントしてくれたもので、その後の音吉にとっては、アフリカ系アメリカ人の文化に関心をもつきっかけともなった大切なレコードになりました。

 ウィソン・ピケットは、幼い頃からバプテスト教会の合唱団でゴスペルを歌って育ったR&Bの申し子です。芸能界にはゴスペル・シンガーとしてデビューしましたが、1964年にR&B/ソウルの牙城アトランティック・レコードに移籍し、ここから彼のソウル・シンガーとしての輝かしい経歴が始まります。

 1965年には初のミリオンヒットとなる『イン・ザ・ミッドナイト・アワー(In The Midnight Hour)』、そして翌1966年には『ダンス天国』を大ヒットさせ、短い間にソウル界のスターダムにのし上がります。

 しかし1970年代後半からヒット作に恵まれず、コカインに手を出して重度のアルコール依存症に陥り、バンド仲間や家族にまで暴力を働くようになりましたが、20年近いブランクを経て復活。1990年後半からスタジオでの活動を再開し、幅広いジャンルで業績を残しましたが、2004年に体調を崩し、翌々年の2006年に心臓発作で亡くなりました。

 ウィルソンは作曲者としても人気があり、ヴァン・ヘイレンVan Halenローリング・ストーンズThe Rolling Stones)、エアロスミスAerosmith)、ブルース・スプリングスティーンThe Rolling Stones)などの大御所に曲を提供しています。

 さて『ダンス天国』ですが、ウィルソンの書いた曲と思いきや、実はR&Bのソングライター、クリス・ケナー(Chris Kenner, 1929-1976)が生みの親。ウィルソンが歌う4年前の1962年に『ダンス天国』は発売されていたんです。しかも当時の売れっ子たちが歌ってレコードにしたものも一枚や二枚じゃなく、最終的にウィルソンがメガヒットさせたということなんですね。

 最後に面白いエピソードをひとつ。この曲は「ナー♪ナナナナー」と歌う部分が強く印象に残りますが、あれってクリス・ケナーの元歌にはなかったんです。メキシコ系アメリカ人のバンド、カニバル&ザ・ヘッドハンターズ(Cannibal&the Headhunters)のヴォーカリストだったフランキー・ガルシア(Frankie "Cannibal" Garcia, 1947 - 1996)がステージで歌詞を忘れてしまい、即興で「ナー♪ナナナナー」と歌ったのが始まりなんだそうです。

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