音楽なら入れ食いですが何か?

野良ネコ音吉のジャンル破壊音楽ブログ

カール・W・スターリングと『ルーニー・テューンズ』

1963年のロードランナー・ショーです。

1943年の作品。エンディングがポーキーのバージョンです。

 

 音吉の少年時代は、以前にアップした『トムとジェリー(Tom and Jerry)』はもちろん、『ルーニー・テューンズLooney Tunes)』なしでは語れません。とはいっても友達の間では少数派でしたが。
 たしかNETテレビ(なんて名称を覚えてたら歳がバレますね。現テレビ朝日のことです)で放送されていたと思いますが、何はさておいても絶対に観たい番組でした。
 間抜けなメロディを意味する『ルーニー・テューンズ』というタイトルは、1929年から1939年までディズニーが製作した短編アニメ映画『シリー・シンフォニー(おバカなシンフォニー、Silly Symphony)』へのオマージュだったようです。
 ちなみに『ルーニー・テューンズ』は、ワーナー・ブラザースの下で、おもに1930年から1969年にかけて製作され、その後は現在に至るまで、散発的ではありますが製作が続いています。
 テューンズという複数形になっているのは、このタイトルは総称だということ。バッグズ・バニー(Bugs Bunny)やダフィー・ダック(Daffy Duck)、トゥイーティーTweety Bird)、ポーキー・ピッグ(Porky Pig)、シルベスター・キャット(Sylvester Cat)などの有名どころから、ヨセミテ・サム(Yosemite Sam)やタスマニアン・デビル(Tasmanian Devil)、ロード・ランナー(Road Runner)、ワイリー・コヨーテ(Wile E. Coyote)などのモブ的な存在までもがそれぞれの「ショー」を持っていて、有名な『バッグス・バニー・ショー』や『シルベスター&トゥイーティー・ミステリー』なんかは、『ルーニー・テューンズ』うちのひとつということですね。
 音吉はワイリー・コヨーテの大ファンだったので、コヨーテの登場する『ロードランナー・ショー』を心待ちにしていました。コヨーテが次から次へと悪巧みを考案し、実行しては自爆するというお約束なんですが、『トムとジェリー』と同様にハナっから結末が分かっている気安さとテンポの良さが子供心をくすぐりました。あ、今でもくすぐられてますが。
 『ルーニー・テューンズ』を語る上で忘れちゃいけないのは、何といってもオープニングの曲と、エンディングに登場する「That's all, folks!(これでおしまい!)」でしょう。
 音楽を担当していたのはカール・W・スターリング(Carl W. Stalling, 1891 - 1972)。『トムとジェリー』の記事で紹介したスコット・ブラッドリーと双璧を成すアニメ映画音楽の作曲家です。製作の過程で、音楽を先に作るか、それともアニメを先に作るかでウォルト・ディズニーと喧々ガクガクの議論をした結果が先に取り上げた『シリー・シンフォニー』だったというエピソードが残っていますが、スコット・ブラッドリーの記事でも取り上げたように、これは当時のアニメ映画の製作現場では避けることのできない課題でした。スターリングも、問題解決にクリック・トラック(フィルムと同期した録音テープにビートが刻まれていて、それを聴きながら指揮者や奏者がレコーディングを行う手法)を用いたとのこと。一説にはクリック・トラックを考案したのはブラッドリーではなくスターリングだったとするものもあるんですが、本当のところは分かりません。
 いくつになっても、この底抜けに陽気でおバカな音楽を聴けば、テレビの前に陣取り、ひたすらワクワクして番組が始まるのを待っていた子ども時代にワープすることができるなんて、音楽とは真に「魔法」ですね。