音楽なら入れ食いですが何か?

野良ネコ音吉のジャンル破壊音楽ブログ

ヴィクトリア・デ・ロスアンへレスの『中世及びルネッサンス期におけるアンダルシアの歌』

 父の持つ赤盤(赤い色のレコード)の中に、ひときわ子供心をくすぐるものがありました。ジャケの体裁も立派なハードボックスで、レコードは一枚しか入っていないのに、ライナーノーツがちょっとしたムックの体裁になっているもので、シンプルで美しいサウンドは何度聴いても飽きることがありませんでした。

 『中世及びルネッサンス期におけるアンダルシアの歌』という学術書のような邦題がついていて、歌手はスペインの偉大なソプラノ歌手ヴィクトリア・デ・ロスアンへレス(Victoria de los Ángeles, 1923 – 2005)でした。

 ヴィクトリアのことは、1992年のヴァルセロナ・オリンピックの時に、閉会式でカタルーニャに伝わる『鳥の歌』を歌った歌手といえば思い出す方もいらっしゃるでしょうか。先に紹介したフォーレの『Pie Jesu』も彼女が歌っています。

 昭和の時代からのクラシック・ファンには説明するまでもない大歌手で、1945年にデビューしてしばらくはオペラ歌手として活躍しましたが、1961年頃からは軸足をリサイタルへと変えて活動するようになりました。彼女は、とにかく技術的な細工を排したストレートでシンプルな、それでいて人の心に染みる歌い方が特徴といえるでしょう。生前から『20世紀を代表する歌手』と讃えられ、1994年にフランス政府は彼女にレジオン・ドヌール勲章を授与しています。

 このレコードは、そんなヴィクトリアの個性と歌の性質がぴったりとマッチした名盤といえると思います。どの曲もハズレなしで選曲に困ってしまいますが、とりあえずA面の一曲目に収録されている『Ah, el novio no quiere dinero(新郎はお金など望んではいない)』をアップします。

 

Ah, el novio no kere dinero!

kere a la novia de mazal bueno,

yo vengo a ver, ke gozen y

logren y tengan muncho bien!

 

Ah, el novio no kere ducados!

kere a la novia de mazal bueno,

yo vengo a ver, ke gozen y

logren y tengan muncho bien!

 

Ah, el novio no kere maniyas!

kere a la novia kara de alegria

yo vengo a ver, ke gozen y

logren y tengan muncho bien!

 

ああ、新郎はお金など望んではいない!

彼は良き将来を携えた花嫁を望んでいる

私は彼らを見に来た。彼らに喜びがありますように

彼らが繁栄し、さらに豊かになりますように

 

ああ、新郎はダカット貨など望んでいない!

彼は良き将来を携えた花嫁を望んでいる

私は彼らを見に来た。彼らに喜びがありますように

彼らが繁栄し、さらに豊かになりますように

 

 

ああ、新郎はブレスレットなど望んではいない!

彼は顔に喜びの満ち溢れた花嫁を望んでいる

私は彼らを見に来た。彼らに喜びがありますように

彼らが繁栄し、さらに豊かになりますように

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購入情報: このアルバムは2020年6月9日現在、中古レコード以外に取り扱いがありません。