音楽なら入れ食いですが何か?

野良ネコ音吉のジャンル破壊音楽ブログ

ミヒャエル・プレトリウスの『テルプシコーレ』

 音吉少年は、高校生になって民族音楽にのめり込むことになるんですが、そのきっかけになった音楽との出会いが小学4年生の頃にありました。

 音吉の父が揃えていたドイツ・グラモフォンのレコード全集(中世からバロックまでだったと記憶しています)があったんですが、音吉はその中に愛らしく楽しい音楽をみつけたんです。分かりやすいメロディだったので、聴くだけでは飽き足らず、レコードに合わせてリコーダーを吹いて楽しんでいました。それまで音吉が知っていた、まるで自分たちが世界の頂点に立っているかのように振舞う西欧の音楽とは違う何かを感じながら。

 音楽の名は『テルプシコーレ(舞曲集、Terpsichore)』。ドイツの作曲家ミヒャエル・プレトリウス(Michael Praetorius、1571[?] - 1621)の手になる器楽コンソート(合奏)曲集です。

 ミヒャエル・プレトリウスは、16世紀から17世紀にかけて音楽家を輩出したプレトリウス家の中で最も有名な人物で、『音楽大全(Syntagma musicum)』という当時の楽器や演奏スタイルなどを詳細に記述した論文集を著したことでも知られています。西欧の古楽が、ありのままに今でも楽しめるのは彼のおかげだといってもいいんじゃないでしょうか。

 またミヒャエルは多作家で、1000曲を超える作品が残されています。敬虔なプロテスタントで、ほとんどは宗教曲。それ以外のいわゆる世俗曲は『テルプシコーレ』だけとのこと。『テルプシコーレ』が一般庶民の活気と気安さに溢れる曲なだけに、ちょっと意外な気がします。

 意外といえば、この時代の西欧は宗教改革大航海時代の真っ只中。それまでの価値観が音を立てて崩れ、新秩序の構築に汲々としていた時代で、どうしてそんな時にこんな音楽が生まれたのか不思議でなりません。音楽史的にはバロックの黎明期にあたる時代なんですが、個人的には『テルプシコーレ』はルネサンス音楽に属しているとしか思えません。この辺は専門家の方に教えていただきたいところところですね。

 今回アップするのはイギリスの作曲家で指揮者(クラリネット奏者としても有名です)のクリストファー・ボール(1936 - , Christopher Ball )率いるプレトリウス・コンソート(Praetorius Consort)の演奏です。リチェルカール・コンソート(Ricercar Consort)やフィリップ・ピケット(Philip Pickett, 1952 - )のニュー・ロンドン・コンソート(New London Consort)など、『テルプシコーレ』には優れたレコーディングが数多くありますが、個人的には素朴で活力に満ちたプレトリウス・コンソールの演奏が大好きなのでこれを選びました。

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