音楽なら入れ食いですが何か?

野良ネコ音吉のジャンル破壊音楽ブログ

イ・ムジチ、そしてクリュイタンス(10インチ盤の思い出)

 ワンダ・ランドフスカのドーナツ盤の次に音吉の餌食になった父のレコードは2枚。いずれも25センチ盤(10インチ盤)で、最初はサイズが物珍しくて手を出したのだと思います。小学1年生の時でした。ランドフスカのレコードとの間には1年半ほどのブランクがありますが、実はその間はソノシートに夢中になっていたんです。そのシートについては別の機会に詳しく書きますね。

 話を戻しますが、父から簒奪した2枚のレコードのうちの1枚は1952年に結成されたイ・ムジチ合奏団の演奏するヴィヴァルディの『四季』でした。記憶が曖昧なんですがステレオ盤だった記憶があるので、おそらくはフェリックス・アーヨを加えた1959年盤であったと思います。イ・ムジチは面白い合奏団で、メンバーの合議制で曲想や演奏の組み立てを決めていく方式を採っているので、いわゆる指揮者は存在しません。日本ではバロック音楽ブームをリードした存在なのでご存知の方が多いかと思います。

 明快で気負いのないヴィヴァルディの音楽は、至極当然に幼い音吉の心にもストンとくるものがあってたちまち夢中になったんですが、あっという間に飽きてしまいました。名演なのに贅沢なもんです。しかも有名な『春(RV269)』には興味がなく、もっぱら針を落としていたのは『冬(RV297)』でした。

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 音吉にとって今に続く出会いであったのは2枚目のレコードのほうでした。フォーレの『レクイエム』で、アンドレ・クリュイタンス指揮のパリ音楽院管弦楽団にディートリヒ・フィッシャー=ディースカウやヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスをフィーチャリングした文句なしの名演でした。

 だだっ広く仄暗い聖堂でポツンと椅子に座り、誰にも邪魔されずに音楽に集中できる。そんな気分に引き込まれて飽きもせず繰り返して聴いたのを覚えています。

「小学生が鎮魂曲に夢中になるなんて大丈夫?」

 と母は心配したようですが。元来、のめり込みやすい性分だったし、鎮魂の何たるかなど知る由もなく、ただただフォーレの生み出す旋律の美しさに惹かれていました。特に第4曲の『ピエ・イェズ』は堪らなく好きで、父から教わった「Pie Jesu Domine, Dona eis Requiem(慈愛に満ち給う主イエスよ、永遠の安息を与え給え)」という出だしの部分だけはロス・アンへレスと一緒に歌っていました。

 このレコードがなぜ音吉にとって運命の出会いになるかについては、折に触れて書いていきたいと思います。

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